”絆”をつなぐ技術 ユマニチュード
認知症の方々は、自分から周りとうまく関係を築くことができず、まわりから対等な人間として扱われなくなっていることがよく見受けられます。
このような差別は、認知症の方々に非常に大きな不安と孤独を与えます。
差別や偏見によりつながりが失われたとき、絆をふたたびつなぐ技術があります。
それがユマニチュードです。
ユマニチュードとは、イヴ・ジネスト氏とロゼットマレスコッティ氏が考案した人間らしさを取り戻す考え方と技術です。
具体的には
- 4つの柱
- 5つのステップ
という技術があります。
基本はとても簡単なので、家族で介護されている方にも取り入れやすいものだと思います。
福岡市でも、2019年より認知症施策の中心にユマニチュードが置かれ、家族向けに講座が開かれています。
以下にユマニチュードの基本をご紹介します。
・・以下、日本ユマニチュード学会HPより引用
4つの柱
ユマニチュードでは、以下の4つの柱を用いて、コミュニケーションを行います。
- 見る
- 触れる
- 話す
- 立つ
この4つの柱は、認知症の方々に
あなたのことを大切に思っています
あなたはかけがえのない大切な存在です
と伝えるための技術です。
4つの柱をひとつずつ見ていきましょう。
・・以下 日本ユマニチュード学会HPより引用・・
「見る」技術
私たちが相手を見る時、多くの場合仕事の対象部位を見ています。
たとえば口腔ケアのために口の中を見る、といったように。
しかし、「見る」ことで相手を大切に思っていることを伝えるためには、仕事のための「見る」つまり手技に必要な視覚情報を得るだけでは十分ではありません。
「見る」ことが伝える言葉によらないメッセージは、たとえば同じ目の高さで見ることで「平等な存在であること」、近くから見ることで「親しい関係であること」、正面から見ることで「相手に対して正直であること」を相手に伝えています。
逆に、ベッドサイドで寝ている人に立って話しかけるとき、そんなつもりはなくても見下ろすことで「私のほうがあなたより強い」という非言語の否定的メッセージが届いてしまいます。
「話す」技術
ケアをする時には「じっとしていてください」「すぐ終わります」などの言葉を発しがちですが、このような言葉にはそんなつもりはなくても「私はあなたに命令しています」「あなたにとって不快なことを行なっています」というメッセージが言外に含まれてしまっています。
これでは相手に優しさを届けることはできません。
「話す」ときも仕事のための「話す」ことだけではなく、相手のことを大切に思っていると伝えるための技術を用います。
低めの声は「安定した関係」を、大きすぎない声は「穏やかな状況」を、前向きな言葉を選ぶことで「心地よい状態」を実現することができます。
また、相手から返事がない時には、私たちは次第に黙ってしまいます。
無言の状況は「あなたは存在していない」と伝える否定的メッセージとなるため、ケアの場に言葉をあふれさせる工夫として、ユマニチュードでは自分が行なっているケアの動きを前向きな語彙で実況する「オートフィードバック」という方法を用います。
「触れる」技術
ケアを行う時、たとえば着替え、歩行介助などで私たちは必ず相手に触れていますが、その時相手をつかんでいることに私たちは無自覚です。
つかむ行為は相手の自由を奪っていることを意味し、認知症行動心理症状のきっかけとなってしまうこともよくあります。
触れることも相手へのメッセージであり、相手を大切に思っていることを伝えるための技術を用います。
具体的には、「広い面積で触れる」、「つかまない」、「ゆっくりと手を動かす」ことなどによって優しさを伝えることができます。
触れる場所もコミュニケーションの重要な要素です。
できるだけ鈍感な場所(たとえば背中、肩、ふくらはぎなど)から触れ始め、次第により敏感な場所(たとえば手、顔など)に進みます。
「立つ」技術
人間は直立する動物です。
立つことによって体のさまざまな生理機能が十分に働くようにできています。
さらに立つことは「人間らしさ」の表出のひとつでもあります。
1日合計20分立つ時間を作れば立つ能力は保たれ、寝たきりになることを防げるとジネストは提唱しています。
これはトイレや食堂への歩行、洗面やシャワーを立って行うなどケアを行う時にできるだけ立つ時間を増やすことで実現できます。
5つのステップ
ユマニチュードではすべてのケアを一連の物語のような手順「5つのステップ」で実施します。
この手順は
1・出会いの準備(自分の来訪を告げ、相手の領域に入って良いと許可を得る)
2・ケアの準備(ケアの合意を得る)
3・知覚の連結(いわゆるケア)
4・感情の固定(ケアの後で共に良い時間を過ごしたことを振り返る)
5・再会の約束(次のケアを受け入れてもらうための準備)
の5つで構成されます。
いずれのステップも、4つの柱を十分に組み合わせたマルチモーダル・コミュニケーションを用います。
Step1「出会いの準備」
自分の来訪を告げ、相手の領域に入って良いと許可を得る
Step2「ケアの準備」
ケアの合意を得る
Step3「知覚の連結」
いわゆるケア
Step4「感情の固定」
ケアの後で共に良い時間を過ごしたことを振り返る
Step5「再会の約束」
次のケアを受け入れてもらうための準備
・・以上、日本ユマニチュード学会HPより引用
・・ユマニチュードの4つの柱・5つのステップは私も現場でいつも使っており、不安でいっぱいの患者様の顔が笑顔になる瞬間を毎日見ています。
奥は深い技術ではありますが、家族で介護されている方も簡単に取り入れられる技術なのでぜひ参考にしてみてください。
ユマニチュードを取り入れることで、介護されている方も 認知症の方も、お互いに笑顔でいられる助けとなることを願っています。
おすすめ書籍
以下は、ユマニチュードのおすすめ書籍です。
①「家族のためのユマニチュード」
著:イヴ・ジネスト ロゼット・マレスコッティ 本田美和子
わかりやすいイラストで説明されており、医療や介護の知識がない方にも抵抗なく読むことができます。
ユマニチュードを用いた認知症の方とのかかわり方を教えてくれます。
認知症の介護をされている方は、ぜひご一読ください。
②「ユマニチュード入門」
著:イヴ・ジネスト ロゼット・マレスコッティ 本田美和子
これからユマニチュードを学んでみようという方の必読書です。
イラストで4つの柱・5つのステップをわかりやすく丁寧に説明しています。
ユマニチュードが生まれたきっかけなども書いてありますので、ぜひご一読ください。
絆を作り、お互いに笑顔でいられるための技術・ユマニチュードを「かかわりの技術」としてご紹介しました。
今日からの介護の参考になれば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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