毎日の介護、お疲れ様です。
今日は、介護者であるあなたが支援を受ける大切さについて書きたいと思います。
皆さんの中には、認知症になられた家族をどう介護するかで頭がいっぱいの方がいらっしゃるのではないでしょうか?
皆さんだけでなく、病院や施設で支援をされている専門職の方々も、本人の支援がメインになっています。私がこれまで在籍した施設・病院でも、本人の支援がほとんどでした。
ではなぜ、家族の支援が今必要なのでしょうか?
答えは、家族が助けを受けることが、家族も本人も犠牲にならないために必要からです。
※以下の記事は、個人の見解を含みます。
・・今日のポイント・・
- 追い詰められるケースとは
- 怒りが生まれる原因
- 体の声を聴こう
- シャンパンタワーの法則
- あなたが大切な家族のためにできること
追い詰められるケースとは
あなたは追いつめられていませんか?
「まだ大丈夫」と答えられる方も、本当は大丈夫でないことがよくあります。
追い詰められるケースとは、どのようなものでしょうか?
次のお話は実際にあった事例です。
妻に人生をささげたある男性の悲劇
ある男性がいました。
認知症になった妻の介護を長年続けています。
叩かれても叩かれても、男性はすり潰したご飯を妻の口へ運びました。
ある日、男性はいつものように妻のために野菜をすり潰していました。
その時、妻が男性につかみかかってきました。
とっさに妻の手を払いのけた際、男性が持っていたすりこぎが妻の目に当たりました。
その時です。
男性の中で押さえつけていたものが一気に膨れ上がり、気付くと持っていたすりこぎで何度も妻の目を突いていました。
「最初の一回は偶然だったんです。でも、あとは気づいたらやってしまっていました。」
これは実話です。
この男性は自分の人生を捨ててまで妻の介護につくしていたはずです。
妻の最期を見送ったあと、この男性はあとを追われました。
今後自分のような人が現れてほしくないと、このエピソードの公開を希望されて亡くなられています。
・・松本一生氏 講座・書籍「今、この時の家族支援」のエピソードをもとにしています。
追い詰められる理由
自分の人生をすべて捧げて介護をしていた男性が、なぜ手をあげてしまったのでしょうか。
なぜこの男性はここまで追い詰められたのでしょうか。
この悲劇が起こった原因は、自分を犠牲にする介護です。
男性を支援されていた松本氏は、このような後悔をされています。
「私はこの男性に、「よく頑張っていますね」とばかり声をかけていました。
でも、そう声をかけることで男性は「もっと頑張らなくては」と思ってしまいました。
私はそう声をかけるべきではなかった。
「頑張らなくていい。頑張っても、自分と家族の割合は7:3ですよ。」
こう声をかけていれば、このような結果にならなかったかもしれません。」
自分の辛さや怒りを押し殺して、この男性はたったひとりで長年介護を続けてきました。
そのやり場のないたくさんの感情は積み重なり、ある日爆発してしまいました。
怒りや辛さ、寂しさ、不安、疲れ。
あらゆる感情は吐き出さずに押し殺していれば、それは一時にはなくなったかに見えるときがあります。でも、それらの感情は確かにあなたの心の中に徐々に降り積もっていきます。
そしてそれが限界を迎えたとき、大切なはずの家族に刃が向いてしまうことがあるのです。
これを松本氏は「善意の加害者の問題」とし、家族にこそ支援が必要と述べられています。
怒りが生まれる原因
怒りとは何でしょうか。
人間だれしもイラっとくることはあります。
私も小さい子供がいますので、大事だとわかっていてもイラっとしてしまうことがよくあります。
あなたが介護で怒りを感じるときはどんなときですか?
「怒り」という感情は、2種類あります。
1つ目は、期待が裏切られたときに生まれる怒りです。
あなたはもしかすると、このような気持ちをお持ちではないでしょうか。
「してほしいことをしてくれない」
「わかってほしいのに、全然わかってくれない」
「なんでそういうことするの」
このような気持ちをお持ちなのであれば、私はよいことだととらえています。
なぜなら、認知症になった家族のことを諦めていない証拠だからです。
人は理想と現実のギャップから怒りを感じます。
でも、「どうせわかってくれるはずないから」「どうせできないから」と家族のことを諦めてしまっていると、怒りさえ湧いてこないはずです。
「わかってほしい」
「こうしてほしい」
そういう望みを捨てていないから、関心を強く持っているから怒りが湧いてくるのです。
2つ目は、押し殺した感情による怒りです。
この怒りは、普段感じている素直な感情を押し殺すことから生まれます。
あなたは介護をされていて、「この人が憎い」「許せない」「怒鳴ってやりたい」という気持ちになったことはありませんか??
そのようなマイナス感情を持つことは人間なら当たり前のことです。これまで家族との長い付き合いのなかでも、認知症になる前からその方に対して喜怒哀楽の感情はありましたよね。認知症になられたからといって、本人に対し怒りや哀しみの感情をまったくもたずに介護ができる人間がいたら、それは神様か仏様だと私は思います。
しかし、「憎い」「許せない」という感情をもってはならない!と自分の素直な気持ちにふたをしようとされる方も少なくありません。
ふたをして押し殺した感情は自分でもわかりにくくなりますが、確かに心の奥底に積み重なります。そしてそれが大きくなると、怒りという感情に形を変えて湧き上がるのです。
妻の献身的な介護の中で手をあげてしまった男性の怒りも、この2つ目の怒りに当たります。
体の声を聴こう
あなたは「介護をまだ続けられる」とご自分で思いますか?
「まだまだ私はやれる」「辛くない」と思われる方も、体の声に耳をすませてみてください。
心がまだやれると思っていても、体の方が悲鳴をあげていることが少なくありません。
体に以下の症状があるときは、心が限界を感じて、体がかわりに悲鳴をあげている状態です。
☑ ふらつき たちくらみ むかつき めまい
☑ 体の痛み
☑ 慢性胃炎 慢性膵炎 高血圧 糖尿病 免疫低下
☑ 不眠
私も育児と介護を同時にしていたことがありましたが、そのときは原因不明のふらつきが現れ、胃腸の調子が悪く食事が入らなくなり体重が減っていったことがありました。その時の不調が回復するまでには数年かかりました。
この中で、もっとも危険な状態が「不眠」です。介護者が眠れなくなった場合、およそ1週間で介護が限界を迎えると松本氏は述べています。
もしあなたが「まだ大丈夫」と思っていても、体の声に耳を傾けてください。体があなたの代わりに悲鳴をあげているかもしれません。そんなときは、迷わず病院や施設に相談し、支援を受けてください。
シャンパンタワーの法則
あなたは「シャンパンタワーの法則」という言葉を聞いたことがありますか?
シャンパンタワーは結婚式などで上からシャンパンを注いで、あふれたシャンパンが下のグラスに次々に流れていくというものですよね。
シャンパンタワーの法則というのは、自分が満たされてはじめて他人を満たすことができるという法則を表したものです。
妻に手をあげてしまった男性の例では、「自分」のグラスには注がれていない状態で「家族」グラスに注ごうとしていたと思います。
それではお互いに幸せでいることはできず、どこかで男性のようなひずみが生まれてしまいます。
まず自分が満たされることで、自然に家族や友人も満たすことができるとこの法則は表しています。
あなたは自分を満たせていますか?
あなたが大切な家族のためにできること
あなたが大切な家族のためにできること。それは、あなた自身を一番大切にすることです。
あなたは自信をもって自分を大切にできていると言えるでしょうか?
例えば、認知症の家族をショートステイに預けて、友達と旅行や食事にいくことに罪悪感を感じたりしませんか?
認知症の家族の介護を続けていくことは、あなたの幸せを手放すことではありません。
あなたをこれまでとても愛してくれた方はどのような方でしょうか。
私は家族、恩師、友人、同僚・・そのなかでも祖父母と義母はとても私のことを愛してくれていました。その愛があったおかげで今私は自分を愛することができています。
あなたがこの記事を読んでいるということは、認知症になった大切な家族から大きな愛を受けていたのではないかと思います。だからブログを読んでまで学ぼうとされているのではないでしょうか。
自分のことも大切にできているという方もおられると思います。
でももし万一あなたが自分を犠牲にしてまで介護しようとされているなら、認知症になられた家族はきっと「自分のことを大切にしなさい」と言われると私は思います。
いつまで続くかわからない介護生活のなかで、自分のことを家族よりも優先することは、ひいては家族を大切にすることにつながります。
家族がデイケアに行っている間に友達と食事に行ってもいい
ショートステイに預けている間に温泉に行ってもいい
必要な支援を受け、ご自分を大切にしてできたほんの少しの心のゆとりから、あなたの自然な笑顔が生まれてきます。その笑顔を大切な家族へ向けてあげることができれば、家族は幸せではないでしょうか。あなたが自分の時間のために介護サービスを受けることは、大切なことなのです。
まとめ
まとめです。
今日は、家族が支援を受ける大切さについて書きました。
・・今日のポイント・・
- 追い詰められるケースとは
- 怒りが生まれる原因
- 体の声を聴こう
- シャンパンタワーの法則
- あなたが大切な家族のためにできること
イライラした感情をもってもいい。「許せない」と思ってもいい。そんな感情をもつ自分を、素直に許してあげてください。
そして「こんなことがあって許せないと思った」「イライラした」という気持ちを誰かに話してください。愚痴になってもいいです。介護職の方でも友人でも構いません。
吐き出す場所がなければ、きっと次第にあなたの心は疲れていくことでしょう。そうなれば、あなたも大切な家族も笑顔でいることはできなくなります。
必要なサービスを自分の時間のために使ってください。
そして、介護で感じたマイナスの感情は吐き出してください。
あなた自身を大切にすることが、あなたの大切な家族を大切にすることになると私は思います。
まず、あなた自身を大切に
これがこの記事で私が伝えたかったことです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
あなたとあなたの大切な家族のこれからが、笑顔でいっぱいでありますように。