あなたの大切な方の介護、毎日本当にお疲れ様です。
あなたは「脳血管性認知症」って聞いたことがありますか?
脳血管性認知症とは、脳の血管が詰まるなどにより認知症の症状が現れた状態です。
認知症患者全体の約2割が脳血管性認知症と言われています。
脳血管性認知症は、脳の血管が詰まる部分によってさまざまな症状があらわれます。症状が多種多様なため、ひとくくりに「○○という症状があります」とは言えないところがあります。
でも、意外に知られていない脳血管性認知症の特徴(傾向)はあります。
今回はアルツハイマー型認知症と比べながら、脳血管性認知症の特徴5つをできるだけわかりやすくご説明いたします。
この記事を読んでいただいたあなたが症状について知ることで、少しでも不安が軽くなればと思います。
※以下の記事は、個人の見解を含みます。
・・今日のポイント・・
- イメージは『プライドの高い男性社長』
- 意識がぼんやりしたりはっきりしたりする
- しびれが出ることがある
- 感情がコントロールしにくくなる
- 血圧に注意
イメージは『プライドの高い男性社長』
脳血管性認知症の大きな特徴のひとつが、性格が”頑固一徹”になる傾向があるということです。
言い方がよくはありませんが、我が強くなり自分のやり方にこだわりがある傾向があります。
これは精神科医の小澤勲氏も書籍の中で述べています。
私のイメージでも、ひとりを重んじ集団になじみにくい方が多い印象があります。
一言で言えば、『プライドの高い男性社長』のような。
言い方を替えれば、しっかりとした揺るぎない自分をもっているのが脳血管性認知症の方々です。
アルツハイマー型認知症が集団で過ごすのを好まれるのに対し、ひとりで過ごすのを好まれ集団より個を大切にする傾向があります。
また、説明しても理屈が通っていなければ納得できないことがあります。そんなときは、静かな場所を選んで一対一で理由を説明して話すとわかっていただきやすいと思います。
『プライドの高い男性社長』と接するような感じと思っていただければ、イメージがとらえやすいのではないでしょうか。
脳血管性認知症の方とアルツハイマー型認知症の方では、落ち着ける場所も違います。
脳血管性認知症の方は、静かなところにひとりでいることを好まれる傾向があります。例えば、デイケアなどではグループに入らずにひとりで新聞を読んだり作業をしたりすることが好きな印象はあります。全員がそうだとは言えませんが、あくまでそのような傾向はあると小澤勲氏も言われています。
一方、アルツハイマー型認知症の方は、「みんなでわいわい」を好まれる方が多いと思います。アルツハイマー型認知症の方は、記憶などが失われても「みんなでわいわい」する能力は保たれています。コミュニケーション能力や協調性ですね。
また、アルツハイマー型認知症の方が抱かれている不安も、集団でいる方が軽くなり安心できることも理由だと私は思います。
脳血管性認知症 ⇒ ひとり好き
アルツハイマー型認知症 ⇒ わいわい好き
といったイメージです。
もしデイケアなどで脳血管性認知症の方が集団に入っていこうとしなくても、「ひとりの方が落ち着くのかも」と考えてみてください。お誘いしてみてひとりでいることを選ばれるのなら、ひとりで静かにいられる場所を尊重することも大切と私は思います。
これはあくまで傾向ですので、全員がそうとは限らないことは強調させていただきます。
意識がぼんやりしたりはっきりしたりする
脳血管性認知症の特徴は、意識がぼんやりしたりはっきりしたりする(意識の変動)ことです。
意識が変動するとは、おおざっぱに言えば「半分寝ているような時とはっきり起きているときがある」ようなイメージです。
脳血管性認知症は、意識の障害(ぼんやりしている状態)が出やすいことが大きな特徴です。一日のうちでも、はっきりした時間帯とぼんやりした時間帯があります。
特に夜間は意識がぼんやりしやすい時間帯です。夜中に家を抜け出す,見えないものが見える・聞こえる(幻覚・幻視),ありもしないことを言う(妄想)が現れやすい傾向があります。これを夜間せん妄といいます。
夜中に突然家を抜け出してありもしないことを言い出すと、家族はびっくりしてしまいますよね。
夜中にこのような症状があれば「夜間せん妄かも」と疑って、部屋を明るくして声をかけたりしてみてください。ぼんやり状態→はっきり状態に戻りやすくなるので、効果があるかもしれません。
反対に、アルツハイマー型認知症は意識が大きく変わることは少ない傾向があります。ただ、脳血管性認知症でもアルツハイマー型認知症でも、脱水でもせん妄は起こりやすいので、急にせん妄のような状態になったら、脱水では?水分はとれていたかな?と疑ってみてください。
入院・入所や引っ越しなどの大きな環境の変化でも、せん妄は現れやすいので注意が必要です。
※歩くときによろめく・ろれつが回らないなどの症状があれば、脳梗塞の可能性がありますので速やかに救急車を呼んでいただくことをおすすめします。
・・アルツハイマー型認知症は意識ではなく調子が一日のうちで変わる場合があります。アルツハイマー型認知症の方は日中たくさんの刺激を受けすぎると、午後~夕方に脳がくたくたになることがあります。すると、イライラしやすくなって「もう帰る!」と言われることもあります。アルツハイマー型認知症の方は特に、騒がしすぎる環境や盛りだくさんすぎるイベントには注意が必要です。
詳しくは、↓をご参照ください。
関連リンク:『TVの音量は大きすぎませんか?認知症の方に騒がしい環境がNGな本当の理由』
しびれが出ることがある
脳血管性認知症は、脳の血管が詰まる部分によってさまざまな症状が現れます。
運動に関係する部分の血管が詰まれば、運動がしにくくなります。
感覚に関係する部分の血管が詰まれば、感覚がわかりにくくなります。
などなど・・。
運動や感覚に関係する部分の血管が詰まると、しびれ(麻痺)が現れて生活がしにくくなります。
しびれ(麻痺)は、右半身や左半身といった片側に出ることが多いです。
上の写真のような方は、右半身麻痺のようですね。
認知症に加えて麻痺が現れると、トイレがしにくくなったり歩くのが難しくなったりと、生活の動きが不自由になります。
脳血管性認知症では、認知症の症状だけでなく麻痺やろれつなどさまざまなその他の症状が現れることがある点が特徴です。
一方、アルツハイマー型認知症の方は麻痺などは出にくいことが特徴です。脳梗塞を起こさなければ、麻痺が現れることはありません。
ただし、「あれ」や「それ」といった言葉が多くなり、使える言葉が少なくなるといった、脳梗塞とは違う言葉の障害は現れます。
・・これは余談ですが、まわりの人とうまくコミュニケーションをとる能力は、脳の広い部分を使います。そのため、認知症の方は全般に、コミュニケーションが前より上手にできないことがあります。頑固になりすぎたり、空気を読みづらかったり。
アルツハイマー型認知症でも、場の空気を読んだり相手の気持ちを察することが難しくなります。これを社会的認知の障害といいます。
コミュニケーションがうまく取れなくなると、家族やまわりの人たちとささいなことでケンカになることもあります。脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症の方は、コミュニケーションにも見えない不自由があると思っていただければと思います。麻痺のように目には見えないのでまわりが気付くことが難しく「あの人はわがままで困る」「昔から融通がきかなかった」など言われてしまいがちです。ただ、一番苦しんでいるのは認知症とともに生きられているご本人なので、「うまくまわりの気持ちが読めないのかも」と思っていただければと思います。
感情がコントロールしにくくなる
脳血管性認知症の方は、感情をコントロールしにくくなる傾向があります。
たとえば、普通怒ったり泣いたりしないような、ささいなことで怒ったり泣いたり。
これを感情失禁といいます。小さなきっかけで感情があふれ出してしまっているイメージでしょうか。感情を調節するブレーキがききにくくなっている状態です。
急に怒り出してびっくりする家族の方もいらっしゃるかもしれませんね。
一方、アルツハイマー型認知症の方に感情失禁が出ることは少ないです。
ただ、さっき起きた出来事をすぐに忘れてしまうので、いつも大きな不安があります。そのため、不安やストレスが理由で怒ったり泣いたりすることはあります。こちらがよかれと思ってしたことに、プライドを傷つけられて怒ってしまうこともあると思います。
確かに脳血管性認知症では感情失禁が出やすいと言われています。しかし、アルツハイマー型認知症でも脳血管型認知症でも、ひとくくりに「認知症の症状で怒っている/泣いている」とは考えないことが重要です。
私たちも、怒っている/泣いているときには理由がありますよね。怒る/泣く理由をまわりにわかってほしい気持ちは誰にでもあると思います。
「どうしたの?」とご本人の気持ちに耳を傾けることが大切だと私は思います。私も認知症ではありませんので、認知症の方の気持ちをすべてわかって差し上げることはできませんが、わかろうと努めて、気持ちに寄り添うことは大切だと思います。
また、あなたはおそらく、認知症になった家族の気持ちに耳を傾ける余裕がないことが多いかもしれません。そんなときは、まずご自分の気持ちに耳を傾けてみてくださいね。自分を大切にすることを悪いと思わないでいただきたいと思います。
詳しくは↓をご参照ください。
関連リンク:『「わかっているけどイライラしてしまう」介護で行き詰まらないための楽になる方法』
血圧に注意
アルツハイマー型認知症と比べると、脳血管型認知症は血圧が高くならないように気をつけることが必要です。
脳血管型認知症の方は特に血管が固くもろくなっており(動脈硬化)、血圧が高くなると新たに脳の血管が破れるおそれがあるためです。
新しく血管が詰まったり破れたりすると、脳血管性認知症は進行します。
脳血管性認知症も、アルツハイマー型認知症と同じで進行する認知症です。
よく階段状に進行すると言われますが、緩やかに徐々に進行することもあります。
目に見えないような小さな脳の血管が徐々に詰まる脳梗塞(ラクナ梗塞)もあるからです。
血圧が高くなりすぎないように気を付け、血圧を下げる薬は忘れないように飲んでいただきたいと思います。
まとめ
いかがでしたか?
脳血管性認知症は麻痺が出たり意識が上下したりと、アルツハイマー型認知症にはみられない変化があるのが特徴です。
性格もひとりを好む傾向があったりと、わいわい好きなアルツハイマー型認知症の方々とちょっと違う傾向があります。
・・今日のポイント・・
- イメージは『プライドの高い男性社長』
- 意識がぼんやりしたりはっきりしたりする
- しびれが出ることがある
- 感情がコントロールしにくくなる
- 血圧に注意
記事であげた以外にも、こだわりが強くなり融通がきかなくなったり、注意がそれやすくなったりと様々な症状が出ることがあります。
脳血管性認知症の介護をされているご家族は、病気の症状がつかめずイライラするようなことがあるかと思います。
そんなときにこの記事を読んで「あ、これは脳血管性認知症の症状かも。病気からくるものなら仕方ないかな。」と思っていただければ、気持ちにほんの少しだけ余裕が生まれるのではと思って書きました。
最後に、脳血管性認知症の方の症状(よくない点)ばかりをあげましたが、できることもたくさんあります。
それに、病気で性格が少し変わったように見えても、その方そのものは変わっていません。
認知症になってもこれまでと変わらない接し方を続けるのが、一番安心感があるのではないでしょうか。
ご家族の方はいつまで続くかもわからない大変な介護の中で、ご自分のこころと体も大切にしてあげてくださいね。
少しでもこの記事があなたの参考になれば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考資料:
書籍『認知症とは何か』 著:小澤勲
書籍『痴呆を生きるということ』 著:小澤勲
講座『認知症の基本的知識と臨床応用』 講師:山口智晴
講座『認知症のリハ・ケアの基本』 講師:山口智晴