※以下には個人の見解を含みます。
あなたの大切な方の介護、毎日本当にお疲れ様です。
あなたは、まぼろしを見る認知症を知っていますか?
とてもはっきりとしたまぼろしを見る症状(幻視)があるのが、レビー小体型認知症です。
認知症の症状がもの忘れや徘徊などと思っている方も多いので、まぼろしを見る認知症と聞くと意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
アルツハイマー型認知症と比べると独特な体の症状が多く、進行が早い(平均余命5~7年)のもレビー小体型認知症の特徴です。
・・アルツハイマー型認知症については、こちらの記事でまとめていますのでご参照ください。
↓
関連リンク:平均余命8年 多くの家族が知らないために後悔しているアルツハイマー型認知症の重要な知識とは
レビー小体型認知症の方は意外に多く、認知症患者全体の約2割がこの認知症だと言われています。
一説には『ざしきわらしもレビー小体型認知症の方が見たまぼろしである』という社会学の論文もありますので、知られていないけれども昔からあった病気なのかもしれませんね。
全体の2割と意外に多いのに知られていないレビー小体型認知症の特徴について、できるだけわかりやすくご説明いたします。
・・今日のポイント・・
レビー小体型認知症の特徴5選
① はっきりとしたまぼろしを見る
② 転びやすくなる
③ むせやすくなる
④ 血圧が大きく変わりやすい
⑤ スイッチが急に切りかわる
はっきりとしたまぼろしを見る
子どもの頃、こんな木目の節を怖いと思ったことありませんか??
私も子供の頃、これは木の模様だと思っていてもなんとなく人が口を開けているようで、寝るときに気味悪いと思っていました。
レビー小体型認知症の方は、このような模様が引き金となってとてもはっきりとしたまぼろしを見ます。
私たちが「人の顔が口を開けているみたい」と思っているのが、そのまま浮き出てきたイメージでしょうか。
布のような平面の模様でも、それが引き金となったまぼろしは立体的でリアルだと言われています。
まぼろしの内容は、床の模様が虫に見えたり、子供が走り回っているように見えたり様々です。
経験では、子供や虫のまぼろしは多い気がします。
「ざしきわらしはレビー小体型認知症の方が見たまぼろしである」という社会学の論文もあるので、この説が正しければ、昔からレビー小体型認知症の方々は子供のまぼろしをよく見ていたのかもしれませんね。
「ほら、そこに子供がいるじゃないか!走り回って!」
「え、お父さん誰もいないわよ。しっかりして!」
このような会話はレビー小体型認知症のご家庭ではよくあると思います。
もし、レビー小体型認知症の主な症状に幻視(まぼろしを見ること)があると知らなければ、びっくりして不安になってしまいますよね。
ただ、幻視はレビー小体型認知症によく見られる一般的な症状です。
幻視は、レビー小体型認知症の方の6~7割にみられると言われています。
もし幻視だと思ったら、まず本人の中では見えていることを認めましょう。
本人の中ではとても鮮明に見えているので、「そんなものいないわよ!どうしちゃったの?」などと見えているものを否定しては、怒らせたり混乱させたりしてしまいます。
「そこに子どもが見えるのね。私には見えないけど。」
と共感しつつやんわりとまぼろしであることを伝えてもよいかもしれません。
触れないことがわかると、中には「なんだ、まぼろしなのか」とまぼろしであることを自覚して安心される方もおられるそうです。
幻視を引き起こしやすいものは以下の通りです。
- 木目
- 模様
- 鏡などの映りこみやすいもの
もし幻視だと思ったら、幻視を引き起こしやすいものを部屋から出したり隠したりすることも有効です。
例えば、映り込みやすい夜の窓にカーテンを閉めるようにしたり、模様のある床に無地のカーペットを敷いたり。
レビー小体型認知症でまぼろしを見ることは一般的なことです。落ち着いていただければと思います。知っていれば、受け入れる心のゆとりもできるかもしれません。
転びやすくなる
レビー小体型認知症は、足が上がりにくくなり転びやすくなります。
パーキンソン病をご存知でしょうか。
パーキンソン病は、体の動きが鈍くなり転びやすくなる病気です。
パーキンソン病とレビー小体型認知症は原因が同じであり、親戚のような病気なのです。
そのため、転びやすくなるという症状も同じです。
次項でお話しする「むせやすくなる」症状もパーキンソン病と同じです。
転びやすくなるのは、脳の障害によりイメージ通り体を動かしにくくなるためです。
自分ではいつも通り大きく体を動かしているつもりが、とても小さな動きになります。
歩き方も、思ったように足が出ず歩幅は小さくなります。
このような歩き方を、小刻み歩行といいます。
さらに、反射が鈍くなり転んだときはとっさに手をつくことも難しくなります。
骨折の危険が大きいことが、レビー小体型認知症の気をつけなければならないポイントです。
転びやすさは、リハビリですぐに治るというものではありません。
私だったら、転びにくい環境を作ることをおすすめします。
例えば、家の中の必要な場所(よく通る廊下,トイレなど)に手すりをつけるなど。
他にも、床に衝撃を和らげるマットを敷くなどのアイデアもあります。
ただし、足が上がりにくくなっているので、足に引っかかるような敷物は控えた方がよいと思います。
また、足がすくみやすく、手すりから遠い位置から手を伸ばそうとすることがあります。
いつも通る廊下なら、床にテープで線を引いて目印にして「この線まで来たら手を伸ばす」というルールを決めてもいいかもしれませんね。
そのため
詳しくは、お近くのケアマネージャーさんやリハビリスタッフの方に相談してみてくださいね。
むせやすくなる
レビー小体型認知症は、むせやすくなる認知症です。
アルツハイマー型認知症は、進行するまでむせて誤嚥することは少ないと言われています。
一方で、レビー小体型認知症は初期からよくむせるようになります。
しかも、病気により飲み込みが悪くなっている部分は、飲み込みのリハビリをしてもよくなりにくい傾向があります(※しばらく食べていない,リハビリをしたことがないなど、飲み込む力を使わずにいたことで悪くなっている部分はリハビリでよくできる可能性があります)。
食事面についてのレビー小体型認知症の特徴は、以下のとおりです。
- 食事の前後で血圧が下がることがある(失神することも)
- におい・味がわかりにくくなる
- 便秘になりやすい
食事の前後で血圧が下がることを、食事性低血圧といいます。まれに食事後に血圧が下がりすぎて失神する方もおられるので、注意が必要です。
におい・味がわかりにくくなることも特徴です。におい・味がわかりにくくなると、食事がすすまなくなります。塩分などの摂り過ぎにならない程度に、味・香りがしっかりした食事にすると食事はすすみやすくなると思います。
便秘はほぼなると言ってよいと思います。かかりつけの先生に相談してお薬を出してもらってもいいかもしれませんね。適度な運動も便秘には良いと思います。
むせを防ぐためには、下のことをしていただくとよいと思います。
- 一回でたくさん食べず、数回に分けて食べる
- 起きてしばらくしてから食事にする
一回の食事の量が多いとむせやすくなるだけでなく、胃から食べ物が戻ってきての誤嚥の危険もあります。また、後にもお話ししますが、調子がいいときとよくない時で食事量が大きく変わることがあります。そのため、数回に分けて食べることで誤嚥を防げるだけでなく、食事量も減りにくくなります。
それでも、むせを全部防げるわけではありません。お食事のときに誰かが見守ることが望ましいと思います。
もし窒息してしまったら・・
上のように、まず咳ができれば思い切り強く咳をしてみてください。それでも出なければ、背中を叩くなど行います。意識がなければ、つまったものを取り出そうとするのではなく速やかに救急車を呼んでください。
血圧が大きく変わりやすい
レビー小体型認知症は、血圧が変わりやすい認知症です。血圧を調節する機能が働きにくくなるのが原因です。
血圧が変わりやすいと、以下の点に注意が必要です。
- 起き上がり・立ち上がり時のふらつき
- 食事の前後での失神
寝ている・座っている姿勢から急に立つと、血圧が下がってしまい転倒してしまうことがあります。
起きてすぐの食事も、血圧が上がらず食べることができないこともあります。
急に起こすのはやめて、ゆっくりと徐々に起き上がるようにしましょう。また、食事の30分ほど前に起きておけば、血圧も戻りやすいと思います。
前にもお話ししましたが、それでも食事前後で血圧が下がることがありますので、注意が必要です。
スイッチが急に切りかわる
さっきまで元気だったのに、突然スイッチが切れたように動けなくなることがあります。これをオンオフ現象といいます。パーキンソン病やレビー小体型認知症の薬の関係で、スイッチが切りかわるような症状が起こると言われています。オン状態のときには活動的ですが、オフ状態のときにはスイッチが切れたように動きが少なくなります。
まれに「意識がなくなったんじゃないか!?」と思われるほど急に動けなくなる方もおられます。そんな時は椅子に座っていただき、しっかりと自力で座っていられるのであればオフ状態と考えてよいと思います。もし意識がないのであれば、椅子に自力ですわっていることはできません。意識がなければ速やかに救急車を呼ぶことをおすすめします。
もしオフ状態のときに食事の時間だったら、食べることが難しいです。そのため、食事の時間にこだわらずに調子のいいときに食べることがよいと私は思います。
まとめ
いかがでしたか?
レビー小体型認知症は、TVなどでよく見る認知症のイメージと全然違いますよね。
記憶障害もレビー小体型認知症では必ず出るというわけではありません。
認知症 = 忘れるようになる病気
というわけではないのです。
他にも、まわりからの影響を受けやすくなる,動作がゆっくりになる,表情が出にくくなる,夜中に動き回る,やる気がでない,一度に2つのことができなくなるなどの症状があります。
まとめです。
・・今日のポイント・・
レビー小体型認知症の特徴5選
① はっきりとしたまぼろしを見る
② 転びやすくなる
③ むせやすくなる
④ 血圧が大きく変わりやすい
⑤ スイッチが急に切りかわる
・・レビー小体型認知症の症状は、よくある認知症(アルツハイマー型認知症)のイメージとは違っています。
違いをまとめると、下の図のようになります。
アルツハイマー型認知症は、不安が強くてそわそわされている方が多い印象があります。「自分はどこかおかしくなってしまっているようだ」という漠然とした病感があり、失敗をどうにかして隠したいと頑張られている方が多く、そのような心の部分が最も大きな特徴ではないかと私は思います。
・・アルツハイマー型認知症については、こちらの記事にまとめていますのでご参照ください。
↓
関連リンク:平均余命8年 多くの家族が知らないために後悔しているアルツハイマー型認知症の重要な知識とは
一方、レビー小体型認知症の特徴は、むせる・転びやすい・血圧の変化が大きいなど体の症状が大きいことが特徴です。
このような症状があることを知っていれば、少しだけ心のゆとりをもって向き合うことができると思います。
また、進行が比較的早い(平均余命5~7年)ため、半年~1年でも状態が変わる可能性が高いということを知っておいていただければ心の準備ができるかと思います。
この記事が、ほんの少しでもご本人様・介護をされているご家族様・スタッフの方々の参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。