あなたの大切な方の介護、毎日本当にお疲れ様です。
認知症をお持ちのあなたの大切なご家族が、自宅にいるのに「もう帰る!」と繰り返し言われることはありませんか?
どう話せば落ち着いてくれるのか、頭を抱えてしまったことがある方も多いのではないでしょうか。
自宅にいるのに「もう帰る」と言われるときのポイントをご紹介します。
帰りたい理由を知る
家にいるのに「帰る」と言われれば
「ここが家なのに、どこに帰るの!?」
と言いたくなってしまいますよね。
私も、何度も「帰る」と繰り返される方に、どうすればいいかわからず、途方に暮れたことがあります。
何度もそのような方に出会ううちに、帰りたい理由は十人十色であることに気づきました。
帰りたい理由の例
- 「ここは居心地が悪い。帰りたい。」
- 「よそにお邪魔していたから、そろそろ帰る時間だ」
- 「帰って洗濯物を取り込まなきゃ」
- 「そろそろ息子が帰ってくるから、ご飯をつくらなきゃ」
- 「帰って夕刊を読まなきゃ」・・etc
まず、認知症によりここが家だと理解できていないこと(見当識障害)が背景としてあります。
そして、帰りたい理由も様々です。
中でも最も理由として考えられるのが
ここが安心できるところではない
という理由です。
家にいながら「帰りたい」とおっしゃる方の「帰ろうとしている場所」は、「生まれ育った生家」のことがあります。
最近の記憶が失われ、昔の自分にタイムスリップしているのです。タイムスリップするきっかけは、今いる場所が安心できないと思ってしまうことであったりします。例えば、失敗してしまったと感じたり、自分が必要とされていないと感じたり。


「このこではなくて、あのほっとする自分の家に帰りたい」
いる場所が自分の居場所でないと感じる場合、自分の安心できる居場所があったあの頃へ無意識にタイムスリップしてしまうのかもしれません。
安心して過ごせる工夫をする
あなたがどこかに行ったとき
「もう帰りたい」
と思うときはどんなときですか??

あなたが帰りたいと思うときは
「ここが安心できるところではない」
と思う時や、とても居心地が悪く苦しい時ではないでしょうか。
「自分は今まで通りふるまっているつもりなのに、何かがおかしい」
そのような不安の中でいつも認知症の方々は過ごされています。
「ここは安心できるところではない」
「帰りたい!」
「安心できる場所に戻りたい!」
と思うことは、とても自然なことです。
認知症とともに過ごすのは、とても大きな不安がつきまといます。
「帰りたい!」と思うのは、安心できる場所を求めていることが、ひとつの大きな理由です。

安心できる環境づくりのポイント
・・あなたはどんなときにほっとしますか??

その方にとって、安心できる環境をととのえてあげてください。
・・安心できる環境づくりのポイント 5つ・・
- 認知症になる前と同じかかわり ・・ 今までと同じように接することが最も安心できます
- なじみの環境 ・・ 昔使っていたものなどを置くと、最近の記憶がなくても安心します
- 静かな空間 ・・ 大きなTVなどの音の刺激は、脳を疲れさせてしまいます
- 少しの横になる時間 ・・ たくさんの刺激で疲れた脳を、少し横になることでリフレッシュします
- 集中できる作業 ・・ やりなれた馴染みの作業に集中することで安心できます

特に、馴染みのものを置いたり、TVの音量を下げたりすることは、すぐにできる安心感を高める環境づくりです。
その方にとって安心できる環境をととのえることで
「帰りたい!」
「ここは安心できない!」
という気持ちを和らげることができます。
無理に引き止めず、付き添って心から話を聞く

「出て行ったらダメ!」
帰りたいのに無理に止められると、あなたはどう感じますか??
無理に引き止めようとすればするほど、帰りたい気持ちやストレスは強くなります。
「帰りたい」と出ていこうとされるときは、一緒に付き添って出ていきましょう。

出ていく理由は様々です。
- 「ここは居心地が悪い。帰りたい。」
- 「よそにお邪魔していたから、そろそろ帰る時間だ」
- 「帰って洗濯物を取り込まなきゃ」
- 「そろそろ息子が帰ってくるから、ご飯をつくらなきゃ」
- 「帰って夕刊を読まなきゃ」・・etc
引き止めることを目的とせず、付き添いながら今どんな気持ちなのか、なぜ出ていこうとしているのか理由を聞き、とことんお話をしましょう。気持ちを伺いましょう。
お話の中から
- 帰りたい理由
- 行こうとしている場所
が見えてきます。
ここで最も大切なことをお話しします。
付き添って話を聞くときは、「落ち着かせて帰らせる」ことが目的でなく、あくまで「家族の話を聞く」ことを目的とすることです。付き添われているご家族は、自分を落ち着かせるために付き添われているのか、寄り添って話を聞こうとしているのか、わかっておられることが多いのです。
付き添いながら、穏やかにしっかりと気持ちを聞いてみてください。もしかすると、あなたが寄り添ってくれるおかげで、日ごろ言えなかった隠していた本音が口をついて出るかもしれません。認知症と付き合う不安であったり、あなたへの感謝であったり、昔話であったり。
そんな話を十分に聞いた後、
「そろそろ戻りましょうか」
と声をかけてみましょう。

もし声かけに応じて帰ってくれたのだとすれば、それは帰りたくなったからではなく、心から話を聞いてくれたあなたに心を許してあたなの言うとおりにしてあげたくなったからかもしれません。
その場をうまく収めること以上に心から話を聞き、関心を示すことが大切です。その中から帰りたい理由・帰りたい場所が見えてくるかもしれません。
まとめ
自宅にいるのに「もう帰る!」を繰り返すときのポイントをご紹介しました。
・・今日のポイント・・
- 帰りたい理由を知る
- 安心して過ごせる工夫をする
- 無理に引き止めず、付き添ってよく話を聞く
・・安心して過ごせる工夫のポイント5つ・・
- 認知症になる前と同じかかわり ・・ 今までと同じように接することが最も安心できます
- 静かな環境 ・・ 大きなTV音など刺激が多すぎる環境では、脳が疲れてしまいます
- ひとりの時間 ・・ 集団から離れることで、自分だけのほっとする時間を作ることができます
- 少しの横になる時間 ・・ たくさんの刺激で疲れた脳を、少し横になることでリフレッシュします
- 集中できる作業 ・・ やりなれた馴染みの作業に集中することで安心できます
人によって「帰りたい」と思う理由は様々です。
出ていく理由があって、ご家族にとっては普通の行動です。
その場をうまく収めること以上に、帰りたい理由・帰りたい場所を知り、安心して過ごせる環境づくりをすることが大切です。最も大切なことは、帰りたいと言わせないことではなく、心から話を聞く姿勢を伝えることだと私は考えます。それは目線や表情や言葉の調子で伝わり、安心感となるのです。
心から話を聞くことを心がけながら、安心して過ごせる環境づくりもやってみましょう。
話しを聞く・環境を整えることの他に、認知症の方々にとって役割はとても重要です。
その方が必要とされる活動の場があると「帰りたい」と思う気持ちは生まれなくなることが多いです。それは私たちでも同じではないでしょうか。自分が必要とされていないと感じ、逆に迷惑をかけていると感じられる場所にはいたくないですよね。
役割については、下の記事をご覧ください。
関連リンク:役割こそ認知症の方に最も必要なもの 認知症となってもできることの見つけ方
そして、子育てと同じように、介護にも終わりがあります。終わりを迎えた後もあなたの人生が燃え尽きることなくご自分の人生を生きられますように。
関連リンク:4大認知症の「余命」とは? 種類別の寿命と影響因子をわかりやすく解説
この記事が少しでもあなたの参考になればうれしいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

