・・今日のポイント・・
絆は認知症の方々にとって必要不可欠なものです。
絆を作るために、まず下のようなかかわりをしてみましょう。
- 優しく手を握る
- 笑顔で目線を合わせる
- 優しく声をかける
絆とは
絆とは、以下の3つです。
① 他者とのつながり・・お互いを尊重し合う人とのつながり
② ものとのつながり・・環境やものと適切に向き合うことができる
③ 自分自身とのつながり・ありのままの自分を認め、自信を持って生きることができる
特に他者とのつながりは、仲の良い友達との関係を想像してみてください。
「おはよう!昨日テレビ見た?あの番組おもしろかったよね!」
このような会話の中に、上下関係はありません。
しかし、認知症になったとたん「あの人はおかしな人」というレッテルを張られ、もはや同じ目線に立つことができなくなってしまっています。そんな極端な例でなくても、介護する側⇔介護される側という隔たりも知らず知らずのうちに生まれてしまっています。すでに対等な立場でなくなっていることさえ、私たちは気づくのは難しいものです。
対等な関係は当たり前すぎて私たちは意識することもありませんが、認知症の方々はこのようなつながりを失うことを非常に辛く感じられています。
V・E・フランクルというアウシュビッツ強制収容所に収容された体験を持つ心理学者は「意味は外部にある」という言葉を残しています。わかりやすく言えば、「人生の意味は自分だけで完結するものではなく、常に周囲の人、社会との関係から生まれる」(「養老孟司著・「バカの壁」より)ということです。
他者とのつながりを持つことは、生きる意味につながります。また、他者とのつながりの中で自分自身とのつながりやものとのつながりも確かなものになっていきます。
生きる意味は、絆の中から生まれる。
これは意外に見落とされている、認知症の方々を理解するうえで大切なポイントです。
絆がなくなると
絆がなくなった状態を想像できるでしょうか。
絆は健常者であれば、ほとんどの方が自然と作ることができます。
例えるなら、「空気」 「水」 のようなものです。
絆が作れなくなってしまうと、以下のような状態になってしまいます。
- 絶望
- 孤独
- 自分がどこにいるのかわからなくなる
- 生きる意欲の低下
下は、全ての絆がなくなった状態です。
詳しくは、認知症の歴史をご覧ください。
ここではまず、①他者とのつながりが失われています。
人 ⇔ 人 の関係はなく
人 ⇔ もの
の関係となってしまっています。
- 「おはよう」とあいさつをする。
- 目を合わせ、顔を見てほほえむ。
- 「最近調子どう??」と話しかける。 ・・etc
このような当たり前の他者とのつながりさえ、認知症になると失われていきます。
また
「ここはどこかわからない。家に帰して。」
という②もの(環境)とのつながりも失っています。
さらに
「悲しい。早く死にたい」
という③自分自身とのつながりも失っています。
ルーマニアの孤児院の例
1980年代、ルーマニアではチャウシェスク政権時代、親に捨てられた膨大な数の子供たちが劣悪な環境の孤児院で非人間的な扱いを受けていました。
60人の孤児に対し、寮母はたったの1人。
ここでは、優しく手を握られることも、笑顔で目線を合わせられることも、優しく声をかけられることもないまま、人とのつながりが抜け落ちた状態となっていました。
これが絆が失われた状態です。
参考:COURRINER JAPAN 排せつ物まみれでネグレクト「不潔で不気味で老人のような子供たち」…虐待された「ルーマニアの孤児」の40年後を訪ねて
表情は乏しくなり、頭をしきりに揺らしたり、うめいたり。
これらの子供には、脳(前頭葉:人間らしさを司る部分)の萎縮が見られたそうです。
しかし、養子となり人間らしい扱いを受けるようになった子供は、上のような症状はなくなりました。
絆が失われた状態におかれると、人間らしさが失われていきます。
これは認知症の方々にも起こっていると、ユマニチュードのイヴ・ジネスト氏は言っています。
認知症の症状だと思っていたものは、実は認知症自体によるものではなく、絆が失われたことによるものも多いと私は思っています。
私はこの絆をおろそかにして認知症の方々と関わり、たくさんの苦しみを与えてきました。
だからこそ、今介護をされている皆さんには 絆を大切にしていただきたいと思います。
絆をつなぐには
「絆が大切といっても、じゃあどうすればいいの?」
とおっしゃる方も多いと思います。
一番最初にできることは、下のようなことです。。
- 優しく手を握る
- 笑顔で目線を合わせる
- 優しく声をかける
「たったこれだけ??」
という声も聞こえてきそうですね。
これは絆を作るフランスの技術 ユマニチュードの一部です。
4つの柱「見る」「話す」「触れる」「立つ」を使い
あなたのことを大切に思っています
というメッセージを伝え続ける技術です。
「私のことを大切に思ってくれている」
そう感じられる時間があることは、認知症の方々にとって最も「人間らしく」あることができる瞬間だと思います。
このようなメッセージを受けることで、①他者とのつながり「私は大切にされている。同じ尊い人間なのだ」と感じることができるようになり、②ものとのつながり「この場所で安心できる」と感じることができるようになり、③自分自身とのつながり「私は生きていてもよい」と感じることができるようになります。
ぜひ明日から いえ、今日から
- 優しく手を握る
- 笑顔で目線を合わせる
- 優しく声をかける
をやってみて、絆を取り戻す支援をしてみてください。
絆を取り戻すことで、認知症となっても生きる意味を見出すことができると思います。
参考になれば嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。